要約
ノンプリエンプティブな軽量スレッド(以下ファイバーと呼ぶ)を提供します。他の言語では coroutine あるいは semicoroutine と呼ばれることもあります。 Thread と違いユーザレベルスレッドとして実装されています。
Thread クラスが表すスレッドと違い、明示的に指定しない限りファイバーのコンテキストは切り替わりません。またファイバーは親子関係を持ちます。Fiber#resume を呼んだファイバーが親になり呼ばれたファイバーが子になります。親子関係を壊すような遷移(例えば自分の親の親のファイバーへ切り替えるような処理)はできません。例外 FiberError が発生します。できることは
- Fiber#resume により子へコンテキストを切り替える
- Fiber.yield により親へコンテキストを切り替える
の二通りです。この親子関係は一時的なものであり親ファイバーへコンテキストを切り替えた時点で解消されます。
ファイバーが終了するとその親にコンテキストが切り替わります。
なお標準添付ライブラリ fiber を require することにより、コンテキストの切り替えに制限のない Fiber#transfer が使えるようになります。任意のファイバーにコンテキストを切り替えることができます。
例外
ファイバー実行中に例外が発生した場合、親ファイバーに例外が伝播します。
例:
f = Fiber.new do raise StandardError, "hoge" end begin f.resume # ここでも StandardError が発生する。 rescue => e p e.message #=> "hoge" end
ショートチュートリアル
ファイバーは処理のあるポイントで他のルーチンにコンテキストを切り替え、またそのポイントから再開するという目的のために使います。 Fiber.new により与えられたブロックとともにファイバーを生成します。生成したファイバーに対して Fiber#resume を呼ぶことによりコンテキストを切り替えます。子ファイバーのブロック中で Fiber.yield を呼ぶと親にコンテキストを切り替えます。 Fiber.yield の引数が、親での Fiber#resume の返り値になります。
f = Fiber.new do n = 0 loop do Fiber.yield(n) n += 1 end end 5.times do p f.resume end #=> 0 1 2 3 4
以下は内部イテレータを外部イテレータに変換する例です。実際 Enumerator は Fiber を用いて実装されています。
def enum2gen(enum) Fiber.new do enum.each{|i| Fiber.yield(i) } end end g = enum2gen(1..100) p g.resume #=> 1 p g.resume #=> 2 p g.resume #=> 3
注意
Thread クラスが表すスレッド間をまたがるファイバーの切り替えはできません。例外 FiberError が発生します。
f = nil Thread.new do f = Fiber.new{} end.join f.resume #=> t.rb:5:in `resume': fiber called across threads (FiberError) from t.rb:5:in `<main>'
目次
特異メソッド
new {|obj| ... } -> Fiber
[permalink][rdoc][edit]-
与えられたブロックとともにファイバーを生成して返します。ブロックは Fiber#resume に与えられた引数をその引数として実行されます。
ブロックが終了した場合は親にコンテキストが切り替わります。その時ブロックの評価値が返されます。
a = nil f = Fiber.new do |obj| a = obj :hoge end b = f.resume(:foo) p a #=> :foo p b #=> :hoge
yield(*arg = nil) -> object
[permalink][rdoc][edit]-
現在のファイバーの親にコンテキストを切り替えます。
コンテキストの切り替えの際に Fiber#resume に与えられた引数を yield メソッドは返します。
- [PARAM] arg:
- 現在のファイバーの親に渡したいオブジェクトを指定します。
- [EXCEPTION] FiberError:
- Fiber でのルートファイバーで呼ばれた場合に発生します。
例:
a = nil f = Fiber.new do a = Fiber.yield() end f.resume() f.resume(:foo) p a #=> :foo
インスタンスメソッド
resume(*arg = nil) -> object
[permalink][rdoc][edit]-
自身が表すファイバーへコンテキストを切り替えます。自身は resume を呼んだファイバーの子となります。
ただし、Fiber#transfer を呼び出した後に resume を呼び出す事はできません。
- [PARAM] arg:
- self が表すファイバーに渡したいオブジェクトを指定します。
- [RETURN]
- コンテキストの切り替えの際に Fiber.yield に与えられた引数を返します。ブロックの終了まで実行した場合はブロックの評価結果を返します。
- [EXCEPTION] FiberError:
- 自身が既に終了している場合、コンテキストの切替が Thread クラスが表すスレッド間をまたがる場合、自身が resume を呼んだファイバーの親かその祖先である場合に発生します。また、Fiber#transfer を呼び出した後に resume を呼び出した場合に発生します。
例:
f = Fiber.new do Fiber.yield(:hoge) :fuga end p f.resume() #=> :hoge p f.resume() #=> :fuga p f.resume() #=> FiberError: dead fiber called